僕の平成オナペット史

少年からおっさんに至るまでの僕の性欲を満たしてくれた、平成期のオナペットを振り返る

実用性を欠いた写真集~篠原直美編~

 僕がグラビアアイドルの写真集を集中的に買い求めていたのは、二〇〇〇年代にほぼ集約されるが、オナぺットとして何十回も繰り返し使わせてもらった作品もあれば、ほんの数回きりで古書店行きになった作品もある。雑誌などで事前に情報を知り、その素材に対して性的興味が湧いたはずなのに、三千円近くも投じて買った写真集をぺらぺらとめくった途端、実用性を欠いた構成にがっかりした経験も少なくない。
 九〇年代から始まった漫画誌のオーディションで、酒井若菜と同じく準グランプリでデビューした篠原直美の写真集「NOW」も、その一つに挙げられる。僕の性癖なら、ロリ巨乳系の酒井に対して股間が膨らむはずなのに、奇しくも今日まで一度も彼女を素材に用いたことがない。篠原の写真集を買おうと思ったのは、その漫画誌のグラビアのスクール水着姿が初々しくてたまらなかったからだ。
 篠原の写真集が発表された九七年は、まだ社会人一年目でまともに休日が取れない日々が続いていた。しかも安月給だったので、自慰用の素材はもっぱら「お菓子系」雑誌か、漫画誌や週刊誌のグラビアにかぎられ、「NOW」を買うのも多少の逡巡を経てのことだった。行きつけのセルビデオ店は写真集を取り扱っていなかったので、自宅から少し離れた宮脇書店で買ったのを今でもはっきり覚えている。
 自室に戻り、さっそく自慰を始めようと写真集を開いてみると、僕が期待していた構成ではないことに戸惑いを覚え、しかし大枚をはたいたのだから所期の目的だけは達成しなければならないと、いつもより性的妄想をたくましく働かせながら射精に導いた。それから五回も使わなかっただろう。どう処分したのかも覚えてなく、今となっては「篠原直美」という素材の名前しか覚えていない。
 普段使いが「お菓子系」雑誌という実用性に富んだ素材だったので、正統派アイドルとして売り出そうとした篠原の写真集では股間が反応しづらかったのかもしれない。「ヤフオク!」に出品されている写真集のサンプル画像をあらためて見返すと、胸の膨らみが目立つ黄色のワンピース姿にもかかわらず、西瓜を汚く食べているショットに当時げんなりしたのを思い出す。帯には「水着がいっぱい」と煽っていながらも、篠原自身に性的アピールが足りないから全体的に中途半端だ。
 同じ出発点でありながらも、酒井はグラビアで認知度を高めたうえで女優としての仕事も増やしていったが、篠原は売り出そうとする側の頭が固かったゆえに、メジャーになりきれなかった。アイドル歌手がまだ市場として成り立っているという誤った判断が、胸の大きめな美少女という篠原のポテンシャルを生かしきれなかった。
 また、篠原自身も芸能界で図太く生きようとしなかったから、ハウス食品のスナック菓子のCMぐらいしか代表作がなかった。歌も写真集も次作を残せなかった篠原と同様、彼女が出演した「こうばしコーン」も、「とんがりコーン」のような誰でも知っているメジャー商品になれぬまま終売となった。