僕の平成オナペット史

少年からおっさんに至るまでの僕の性欲を満たしてくれた、平成期のオナペットを振り返る

転職と「朝オナッ!」

 二〇〇五年六月。
 二度目の転職を機に、僕は県庁所在地である某地方都市へ引っ越すことになった。親会社の社宅を安く提供してくれたので、勤務先まで自転車で十分もかからないほど職住近接が可能になった。朝晩の満員電車に揺られる必要がなくなった反面、会社内の自由度や創造性は低く、入社二、三年目の仕事内容に甘んじている社員が多数を占めていたので、僕は試用期間の段階で逃げ出したくなった。
 よそ者はよそ者らしく、会社内ではおとなしく淡々と仕事をこなし、ほかの社員とは距離を置いていたが、仕事での消化不良感は日増しに高まっていき、その憂さ晴らしとして出勤前に自慰をするようになった。起床して身支度を整え、電子レンジで温めた無菌米飯に納豆をかけて食べた後、朝一の自慰に勤しむ。〇八年四月までこの会社に籍を置いていたが、早出直行の日以外はほぼ毎日出勤前に射精していた。
 自慰の最中、隣の部屋ではテレビがついたままで、僕はいつもTBS系列の情報番組を耳にしながら性的興奮を昂らせていた。出勤前の自慰は、その番組の名前をもじって「朝オナッ!」と称した。午前八時四十分前には社宅を出るので、「はなまるマーケット」が始まっても射精に至らないと焦りを感じた。「朝オナッ!」は土、日曜も行い、やはりTBS系列の「知っとこ!」と「サンデーモーニング」を耳にしながらだった。
 休日の自慰は一日三、四回の固め打ちで、日曜日の場合、朝一の後、近所のスーパーで買い物を済ませ、「サンデージャポン」を冷ややかに見終わってから、二回目の自慰という流れになる。テレビのチャンネルはTBS系列のままで、長峰由紀が原稿を読むニュースの時間帯と重なっていた。スポットCMが延々と続いた後、画面が報道スタジオに切り替わり、化粧の濃い長峰仏頂面で「ニュースです」と一声発し、原稿を読み始める。CMからスタジオに画面が切り替われば、視聴者は「ああ、ニュースの時間だな」と察するはずなのに、長峰は「こんにちは」でなく「ニュースです」と何の愛想を見せず、そこで読み上げられるのも全国の事件事故ネタばかりで、彼女の語り口がそれらの悲惨さを際立たせた。
 日曜日の夕方は、「笑点」を見終わってから「サザエさん」が始まるまでの約三十分間を自慰の時間に割いた。すでに二、三回の射精を果たしているので精液の量も少なく、「ちびまる子ちゃん」のエンディングテーマが流れている頃にそれを処理するのが普段の流れで、僕自身の体調や自慰用の素材が今一つだったときは「サザエさん」のオープニングにずれ込むこともあった。
 僕の年間自慰回数は〇四年をピークに右肩下がりとなる。週末の一日五回と平日の一日二回が減ったのが原因だが、「朝オナッ!」と週末の固め打ちは途切れることなく、〇八年前半まで続いた。十八歳以下のグラビアアイドルが続々とデビューしていく流れに抗えず、僕は週末のたびにセルビデオ店へ足を運び、新作を物色する作業を続けた。